高橋くんに訊ねられて、雪夜くんは黙って見つめ返した。

そこで嵐くんが「大丈夫だよ」と口を開く。


「雪夜、小さいときからギターやってて、めっちゃ上手いから。たいがいの曲なら弾けるはず。俺が保証するよ」


おおっと声が上がって、バンドの男子たちが集まってきた。


「遠藤、高橋の代わり、やってくれるか?」

「べつに……いいよ」

「まじか! うわあ、本当に助かる、ありがとう!」

「……ん」

「やるつもりの曲、これなんだけど、知ってる?」


音楽プレイヤーにつながれたイヤホンを差し出されて、雪夜くんは手にとって耳に差し込んだ。

しばらく聴いてからイヤホンを外す。


「知らないけど、まあ、弾けそう」

「まじで? いける? あ、スコアコピーして渡すから」

「いいよ、聴いたら弾けるから」


男子たちがおおっと歓声を上げて、「遠藤かっこいい!」と拍手をした。


「ちげーよ……俺、楽譜読めないから、スコアもらってもあんま意味ない」

「マジか! 全部耳コピでやってきたん?」

「まあ」

「すげえ、耳いいんだなー」


彼らの和気あいあいとしたやりとりの様子を、少し離れたところから見ていた私たちも、驚きを隠せない。