しばらくの間、沈黙が流れたあと、高橋くんが顔を歪めて、

「……ほんとごめん、みんな」

とバンド仲間に謝る声が響いた。


それがあまりにも申し訳なさそうで、聞いているこちらまで心が痛くなる。

なんとかしてあげたいけれど、きっとピアノなんて弾けたってどうにもならないだろうし……と思って見つめていたら、ふいに嵐くんが輪から離れた。


なんとなく目で追っていると、窓に寄りかかって立っていた雪夜くんのもとへまっすぐに向かっていった。


「……なあ、雪夜。頼めないか?」


ぽつりと言った嵐くんの声は小さかったけれど、教室中のみんなが耳を傾けていたので、はっきりと聞き取れた。

え、どういうこと? と何人かが首を傾げる。

私も同じように二人のやりとりを見ていた。


雪夜くんは腕組みをして嵐くんをじっと見据えていたけれど、しばらくして、仕方がないな、というように息を細く吐いた。


「え、なになに、遠藤ってギター弾けるの?」


山内くんが驚いたように声をかけると、雪夜くんは「まあ」と曖昧に頷いた。


高橋くんがほっとしたように笑みを浮かべてから、少し不安そうな顔になる。


「あのさ……ライブでやる曲、四曲あって、しかも割と難しめなんだ。こう訊いたら失礼なのは分かってるんだけど、遠藤、どれくらい弾けるんだ?」