傷つけたくない 抱きしめたい








不思議な夢を見た。


ほのかに霞のかかったような、淡い乳白色の世界。


その優しい空気に包まれているだけで、私はとても幸せな気持ちになる。

ふわふわと柔らかくて軽い、降ったばかりの新しい雪に埋もれているような感覚。


その世界の真ん中に、君がいる。

私に向かって、穏やかな眼差しを向けている。


『――なんだよ』


笑いを含んだ声でおかしそうに言う君。


『これ、そんなに気に入ったの?』


からかうように言って、君は右手に持っていたものをこちらに差し出してきた。


私の広げた掌に、君の指先がつまんでいたものがそっと置かれる。


綺麗な涙の雫。


『そんなに気に入ったんなら、やるよ』


――いいの?

と私は訊ね返す。


――これがないと、困るんじゃないの?

『困らないよ、別に。他にもたくさん持ってるから』


そう言って笑い、君は私の頭をくしゃりとかき回した。


温かくて、嬉しくて、幸せで、泣きたくなる。


――ありがとう。

『ん。俺もお前からはたくさんもらってるからさ』

――え? 私、何もあげてないよ……。

『お前はあげてないつもりでも、俺は勝手に色々もらってるんだよ』

――どういうこと?

『お前は知らなくていい』

――ええ? 意味わかんない……。


私が眉を寄せて首を傾げると、君はおかしそうに笑い声をあげた。

それを見て私まで楽しくなって、笑いが洩れる。


……いつまでも、こうして、二人でいられたらいいな――。