私は首を傾げながら宝箱のところに戻った。

床の上に散らばっていた宝物たちを、一つずつ箱の中に戻していく。


幼稚園のころにお気に入りだった青いビー玉。

小学生のころに何度も読み返した絵本。

中学校の修学旅行先で買った、押し花のしおり。

その他にも、たくさん。


一つ一つに思い出があって、手に取った瞬間、そのときの気持ちや風景が鮮やかに甦ってくる。


でも、途中で、奇妙なことに気がついた。


入れた覚えのないものがいくつかあるのだ。

入れた覚えがないどころか、見た覚えもないもの。


初めて見たとしか思えないし、とりあげてじっと見つめてみても、なんにも思い出せない。


特別な思い入れがあるものしかこの中には入れていないはずなのに。


どういうことだろう、と戸惑いつつ、何も覚えてないものだけを集めてみる。


折り紙のチューリップ。自分が子供の頃に作ったものかな、と思ったけれど、それにしては色紙が新しすぎるような気がする。

使っていない絆創膏。なんでこんなものがここに?

ピアノの鍵盤が描かれたペンケース。ファスナーを開けて中を見てみると、何か物を入れて使っていた形跡があって、なんとなく不気味だ。

細いチェーンのネックレス。真ん中には、小指の爪ほどの大きさの透明な石がついている。

小さく折り畳まれたノートの切れ端のようなもの。開いてみると、『Am Dm G C Am Dm G Am』と鉛筆で走り書きがしてあった。私の字ではないし、内容も意味が分からない。