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家にたどり着いて玄関のドアを開けた瞬間、どっと疲れがきた。
本当に色々あった一日だった。
気持ちを整理したくて、重い身体を引きずるようにして二階に上がり、部屋に入って日記帳を出す。
今日あったこと、感じたことを、忘れないうちに、薄れないうちに、文字にして残しておきたかった。
ペンを持って、今日の日付のページを開く。
どう書こうかな、と頭で考えてみたけれど、何から書けばいいか分からなくて、とにかくペンを走らせる。
ほとんど無意識に書いた最初の文字は、『雪』だった。
それに気がついた瞬間、恥ずかしさに襲われる。
でも、日記の中なら、誰にも知られないから。
だから、思ったことを素直に書けばいい。
『雪夜くんが助けてくれた。手を繋いで歩いてくれた。懐かしくて、切なくて、嬉しい気持ちになった。』
少し手を止めて、また続きを書く。
『雪夜くんは、なんだか不思議な人。』
そこで終わろうと思ったけれど、なんとなくまだ書きたくなって、再びペン先を紙に置いた。
――『しりたい、きみを。』
気がついたら、そう書いていた。
書いてから、そうだ、これが私の気持ちだ、と自覚する。
雪夜くんのことが知りたい。
出会った頃、どうしてあんなに冷たかったのか。
海の中で抱きしめられたとき、どうしてあんなに安心したのか。
手を繋いだとき、どうしてあんなに懐かしかったのか。
知りたい。