遠藤くんのあまりに素っ気ない態度に、胸がぎゅうっとしめつけられたような気持ちになる。


勇気を出して話しかけたのに、まさか、無視されるなんて。


目頭が熱くなった。

あわてて両手で瞼を押さえて涙をこらえる。


そうしていると、突然、「ちょっと」と染川さんの声がふってきた。

驚いて目をあげると、私の席の横に立った染川さんが、眉をひそめて遠藤くんをまっすぐに見つめていた。


「遠藤くん、なんで答えないの?」


まったく臆することのない、はっきりとした口調。

やっぱり染川さんはすごい。


遠藤くんがまた、横顔だけでちらりとこちらを見る。

私ははっとして、慌てて「いいの」と染川さんの手をつかんだ。


「私がいきなり話しかけちゃったから……」

「それにしたって、無視はないでしょ」

「でも……」

「ねえ、遠藤くん。話しかけられたら答えるのが礼儀でしょ」

「………」


遠藤くんはじっと染川さんを見つめ返して、小さく口を開いた。


「――話したくなかったから、黙ってた」


どくんと心臓が跳ねて、胸が苦しくなる。


「なにか悪いか?」


遠藤くんは平然と染川さんに訊ね返した。


「話したくないって、どうして……」


思わず呟くと、遠藤くんは一瞬だけ私を見て、また染川さんに視線を戻した。

そのまま、黙りこんでしまう。