うん、と頷いて立ち上がる。


岩の隙間を縫うように歩き出した雪夜くんを追って、何気なくその背中を見た瞬間、私は驚きで足を止めた。


雪夜くんの背中に、肩から腰へかけて斜めに走った、大きな傷痕があったのだ。


彼は左腕にも同じような傷のあとがある。

もしかして、同じときの怪我なのかな。


息を呑んだまま見つめていると、後をついてこないことを不審に思ったのか、雪夜くんが怪訝そうな顔でちらりと振り向いた。


動揺を隠して一歩踏み出す。

すると、慌てて足元をよく確かめなかったせいで、足場の悪いところを踏んでしまった。


ぐらっと身体が傾いて、やばい、と焦りを覚えたとき、ぱしっと腕をつかまれた。


「……危ないな。ぼうっとするなよ、転ぶぞ」


雪夜くんが呆れたように言った。

私はごまかし笑いを浮かべて、「ごめん、ありがと」と答える。


「ったく、本当、しょうがないやつだな」


雪夜くんは肩を竦めて、私の手をつかんだまま歩き出した。


ごつごつとした岩場も、雪夜くんが歩きやすい場所を選んでくれるので、なんとか進んでいける。


でも、彼に比べるとやっぱり私の歩くのが少し遅いので、少しずつ手がずれていって、いつの間にか、手を繋いでいる形になってしまった。