荒い息を整えて深呼吸をしてから、

「雪夜くん、ありがとう」

と告げた。


雪夜くんは何でもなさそうな顔をして、「ああ」と頷いただけだった。


ふいに彼の視線が動いたので目で追うと、さっきの男たちが慌てた様子で立ち去るところだった。


「……最低なやつらだったな」


雪夜くんは呆れたように呟いてからこちらを向く。


その視線が私の肩のあたりで止まった。

破られてしまったカーディガンの裂け目から素肌が覗いている。


雪夜くんは突然、着ていたパーカーを脱いだ。

上半身だけとはいえ裸の肌が現れて、私は慌てて目を逸らす。


「……これ、着てろ」


目の前に雪夜くんのパーカーが差し出された。


「濡れてるし、気持ちが悪いだろうけど」


私は「このままで大丈夫だよ」と首を横に振ったけれど、雪夜くんは「見てられない」と呟く。

そのまま押しつけるように渡されて、仕方なく受け取った。


破れたカーディガンを脱いで、雪夜くんのパーカーに着替える。

さすがにサイズが合わなくて袖が余ったので、手首のところで折り曲げた。


「本当に色々ありがとう。助けに来てくれて、服まで」


自分でそう言ってから、ふと気がつく。


「ねえ、雪夜くん。どうしてあそこにいたの?」


私が連れていかれた人気のない岩場に、たまたま彼がやって来たとは考えにくかった。