「……ふざけんなよ、下衆が」


雪夜くんは低く唸り、男をつかんでいた手を乱暴に振り払った。


「なんだ? てめえは!」


男たちが怒りに顔を歪めて、同時に雪夜くんにつかみかかっていく。

雪夜くんは身軽によけていたけれど、岩場に足をとられてよろけた拍子にパーカーの胸ぐらをつかまれてしまった。

と同時に、一人に肩を殴られ、もう一人に突き飛ばされる。


彼が倒れ込んだ先には尖った岩があって、私は心臓をわしづかみにされたような気がした。


「雪夜くん!」


駆け寄ろうとしたとき、いきなり腕を引っ張られて羽交い締めにされた。


「邪魔すんな!」

「嫌です! なんで雪夜くんを殴るの!」

「生意気だからだよ!」


そんな理由で人を殴るなんて、信じられない。


怒りで頭が沸騰しそうだった。

今まで生きてきて、こんなに怒ったことはない。


雪夜くんは幸いにも鋭利な岩にはぶつからず、顔をしかめながら立ち上がった。

そこに男の拳が飛んでいく。


「やめて! 雪夜くん、逃げて!」


私は叫んだけれど、雪夜くんはそこから動かなかった。


ぎりぎりのところで拳をよけて、私のほうを見る。

それから視線を上げて、私を羽交い締めにしている男を睨んだ。


「美冬に触るな!」


次の攻撃をよけて、雪夜くんはこちらに向かってくる。

でも、後ろから肩をつかまれて止められてしまった。


男が再び殴りかかる。