俯いて視線を落とすと、自分の手足ががたがたと震えているのに気がついた。

背中にも嫌な汗をかいている。


「ぎゃはは! うける! めっちゃ震えてんじゃん!」

「怖いんでちゅかー?」

「ったくさあ、女のくせに調子乗って口出ししてくんのが悪いんだよな。自業自得だよ」


筋張った大きな黒い手が伸びてきて、破れたカーディガンを無造作につかんだ。

そのまま引きずり下ろされそうになって、反射的に襟をつかむ。

するとさらに力が込められて、一気に脱がされた。


恥ずかしさと恐ろしさで息ができなくなる。


「や……やめて……」


震える声で言うと、「聞こえねえな」と笑われた。


いや、やめて、と繰り返す。

でもその声は空気に溶けたように消えてしまった。


後ろから引っ張られて押し倒される。

背中に尖った岩が当たって、痛みで目をぎゅっと瞑った。


両腕を押さえつけられ、動けなくなる。

お酒くさい息が降ってきた。

顔を背けたら、顎をつかまれて前を向かされた。


必死に足をばたつかせたら一人の太股に当たり、舌打ちとともに足まで押さえつけられてしまう。


自分の身体のはずなのに、何ひとつ自分の思う通りにはならなかった。


――ああ、もうだめだ。

絶望した、そのとき。



「―――美冬!」