深呼吸をしてから、一歩踏み出す。


早く戻りたかった。

雪夜くんのいる場所に。

あそこなら、きっとすぐにこの驚きと恐怖はおさまる。

雪夜くんの隣は、いつも静かで穏やかだから。


自然と足が早まった。

でも、そのとき、げらげらと笑う声が背後から聞こえて、私は反射的に振り向いた。


そこには、小柄な女の子二人に声をかけているさっきの三人。

囲まれているのは、佐絵と同じくらい年の女の子だ。

背の小さい彼女たちは、彼らの影の中にすっぽり入ってしまって、怯えたように肩を寄せあっていた。

彼らはその様子を見ておかしそうに笑い声をあげる。


周りの大人たちは迷惑そうに見ているけれど、彼らの柄の悪さのせいか、誰も助け船を出そうとはしていないようだった。


右手に持った袋が、ずしりと重くなったように感じた。

耳の奥のほうで心臓が大きな音を立てている気がする。


私が微動だにできずに見ているうちに、男の一人が女の子の腕を掴んで、引きずるように歩き出した。

きゃっ、と小さな叫び声があがる。


「そんな怖がらなくていいって! ほんと、一緒にバーベキューするだけだから」

「そうだよ、人聞き悪いからさ、叫んだりすんなよな」


一人がどすのきいた低い声で脅すように言ったので、女の子たちは肩を震わせて黙りこんでしまった。