固まっていると、もう一人がぐっと顔を近づけてくる。

お酒のにおいがして、やっぱり酔っぱらってるんだ、と思った。


「見ろよ、固まってるぜ。小鹿ちゃんみたいじゃね? かわいいなー」


酒くさい息が顔にかかって、思わず俯いてしまった。

すると三人がどっと笑い声をあげた。


「やべえ、めっちゃ怖がられてるぞ」

「俺ら悪いやつじゃないからさ、安心してよ」

「かわいい、かわいい。子犬的な?」

「ねえ、俺らさ、あっちでバーベキューやってんだよね。一緒にどう? 食べ物も酒もいっぱいあるからさ」


囲まれて、大きな声で話しかけられて、緊張と動揺で心臓が破裂しそうだった。


でも、なんとか勇気を振り絞って、「あの」と声をあげる。

かすれて震えていたけれど、三人の視線が私に集まった。


「ごめんなさい……友達と、来てるので」


ペットボトルが入ったビニール袋を指で示すと、彼らは「へえ」と声をあげた。


「なに? 女の子四人で来てんの?」

「それならみんな連れて来ちゃっていいよ」

「いえ、あの、女の子二人と男の子二人で……」

「なあんだ、男いんのか。つまんね」

「じゃ、いいわ」


彼らは一瞬にして興味を失ったように顔色を変え、くるりと踵を返した。


よかった、とほっとすると同時に、こわかった、と足が震えるような心持ちがした。