私はいつものように本を開き、お気に入りの小説を読みはじめた。

でも、やっぱり落ち着かなくて、気になってしまって、ちらりと横に目を向ける。


遠藤くんはさっきと同じようにだらりと椅子に腰かけて、どこかつまらなそうに外を見ていた。

窓から射し込んでくる陽の光に縁どられた横顔は、すこし神経質そうで、でも、よく整ったきれいな輪郭をしている。


彼は窓の外にしか関心がないようで、同じ教室にいる誰にも興味を持っていないように見えた。

ちがう世界に生きているみたい、となんとなく思う。


でも、その浮世離れした感じが、何ヵ月か前に読んだ小説に出てきた不思議な男の子のイメージと重なって、私は勝手になんだか嬉しくなった。


すこし変わった子みたいだけど、仲良くできたらいいな。

そのためには、まず、私から声をかけないと。

染川さんみたいに、三浦くんみたいに、明るく、自然な感じで。


私は本を閉じて、ひとつ深呼吸をしてから、隣に身体を向けた。

心臓がどきどきしている。

でも、なんとか呼吸をととのえて、勇気をふりしぼった。


そして、口を開く。