さすがに追いかけては来なかったので、ほっとして、少し歩く速度を緩める。

胸に手を当てて、まだ暴れている心臓のあたりをぐっとおさえてみたけれど、なかなか静まってくれない。


そういえば彼が何を飲みたいのか聞きそびれてしまった、と気づいたのは、海の家の前にたどり着いてからだった。

仕方がないので、スポーツドリンクを二種類と、麦茶とオレンジジュースを買って、好きなものを選んでもらうことにする。

残った分は、私と梨花ちゃんと嵐くんで分ければいい。


五百ミリリットル入りのペットボトルが四本になってしまい、かなり重たかったけれど、いつものスーパーでの買い物で慣れているので、なんとかなりそうだ。


そんなことを考えながら少し俯いて歩いていると、突然、目の前の砂にサンダルを履いた足が三人分、現れた。

色黒で筋ばった、男の人の足だ。


反射的に左によけて、大回りをして先へ行こうとする。

でも、彼らの足が道を塞ぐように動いた。


ぱっと目を上げると、お酒を飲んでいるのか真っ赤な顔をした若い男たちが、にやにやと笑いながらこちらを見ていた。


日に焼けた浅黒い肌に、金色の髪と、耳や唇や眉などに無数のピアス。

見た目だけですごく威圧的だ。


どくっと心臓が跳ねる。

嫌な感じだ、と本能的に思った。


「ねえねえ、君、かわいいねえ」


一人が唐突に口を開いた。

びっくりしすぎて、何も言えないし、ぴくりとも動けない。