変な顔をされるかな、と思っていたのに、雪夜くんは、ふっ、と小さな笑みを洩らした。


それは馬鹿にするようでも呆れたようでもなく、優しく包み込むような笑い方だったから、思わず目を奪われた。


なんてきれいな微笑み方なんだろう。


しばらく見つめてしまってから、なんだか恥ずかしくなって、鼓動が早くなるのを自覚する。

いたたまれない気持ちがして、私はがばっと立ち上がった。


「……なんか、飲み物、買ってくるね!」


雪夜くんが少し驚いたように目を見開いていた。

直視できなくて、さりげなく視線をそらし、財布を探すふりをして鞄の中をまさぐる。


「雪夜くんは何がいい? お茶とか、ジュースとか、あ、スポーツ飲料がいいかな」


間を持たせるように早口で言うと、雪夜くんが小さな声で「俺も行くよ」と答えた。


それでは私がこの場を離れようとした意味がない。


「いいよ、雪夜くんは休んでて。まだ顔色悪いし」

「もう平気だよ」

「でも、また悪くなったら大変でしょ。帰れなくなったら困るし。ね、ゆっくりしてて」

「………」


ちらりと見ると、雪夜くんは怪訝そうな顔をしていたけれど、私は気づかなかったふりをしてそのまま早足で歩き出した。