雪夜くんは何も言わず、私の心の奥底を見抜こうとするとうに、じっとこちらを見ている。

これは本心だよ、とどうしても伝えたくて、私もまっすぐに見つめ返した。


「泳ぐのは苦手だし、身体を動かすのもあんまり好きじゃないの。だから、ここに座って海を見てるだけで充分。楽しそうに遊んでるみんなを見てるだけで、すごく楽しいから」


雪夜くんはしばらく無言で私を見つめたあと、「……変なやつ」とぼそりとつぶやいて、両腕を交わして顔にのせた。

それで表情は見えなくなってしまったけれど、声色が柔らかくなったから、機嫌が良くなったのかな、と私は思った。


雪夜くんに言ったことは、彼への気遣いもあったけれど、全くの嘘というわけではない。

私は梨花ちゃんや嵐くんと一緒に海水の中に入ってボールで遊ぶよりも、雪夜くんの隣でぼんやりと座って海の景色を見ているほうが、ずっと心地よかった。


いつの間にか太陽は真上に来ていて、さんさんと降り注ぐ陽射しが、きらきらと煌めく光の粒を睫毛の上に散りばめる。

眩しいけれど、とても綺麗だ。

なんだか嬉しくなって、私は目を半分閉じて、睫毛の上を転がる光の舞を楽しんだ。


「……なににやにやしてるんだよ」


突然、低い声が聞こえて、私はびっくりして視線を落とした。

雪夜くんの静かな瞳がこちらを見ている。


「……ええと。睫毛に光が反射して、きらきらして綺麗だなって……」