梨花ちゃんと私にさっと視線を走らせて、「可愛い、可愛い」と言ってくれる。

じろじろ見るわけでもなくさらりと言うので、とても感じが良かった。

さすが嵐くん、大人だなあ、と感心してしまう。


梨花ちゃんを見ると、何とも思っていないような顔をしながらも、頬と耳がほんのり赤くなっていて、可愛いなあ、と私は心の中で微笑んだ。


雪夜くんはというと、こちらには目もくれず、素知らぬほうを向いている。

嵐くんと同じようなハーフパンツの上に、パーカーをはおっていた。


「ちょっと雪夜、なになに、上着なんか着ちゃって。裸見られるの恥ずかしいのー?」


梨花ちゃんがからかうように言うと、雪夜くんは不機嫌そうに見つめ返して、またそっぽを向いた。


「雪夜はあれだよな、肌が弱いから直射日光浴びるとやばいんだよな」


間を取り持つように嵐くんが言うと、梨花ちゃんは「そうなんだ、ごめん」と素直に謝った。

雪夜くんは「べつに……」と呟いて歩き出す。


嵐くんは雪夜くんの腕の傷のことを知っているのかな、とふいに思った。

それで、梨花ちゃんの追及からかばったのかもしれない。


「ビーチボール借りてきたから、遊ぼうぜ!」

「いいねえ」


嵐くんと梨花ちゃんが楽しそうにボールを持って海のほうへと歩き出す。

ちらりと雪夜くんを見ると、やっぱり海を視界に入れないようにしているのが分かった。