間違いを訂正したいけれど、うきうきしている梨花ちゃんに、『あれは雪夜くんの体調が悪くて……』なんて言えなくて、雪夜くんも黙っていて欲しかったようだし……などど考えているうちに、結局は何も言えなくなってしまった。


「まあさ、雪夜は変なやつだけど、悪いやつじゃないし」

「う、うん……」

「そういえば、最初は美冬にひどいこと言ったり無視したりしてたけど、あれって照れ隠しだったのかもね」


うふふ、と笑いながら言う梨花ちゃんの言葉に、私は「えっ?」と目を丸くした。


「照れ隠し?」


梨花ちゃんは「そうそう」と頷きながら荷物を持って更衣室の出口に向かう。


「美冬が可愛いから一目惚れしちゃって、緊張して恥ずかしくてまともに喋れない、だから逆にいじめちゃう、って感じ? あはは、お前は小学生男子か! みたいな」


いや、それはないよ絶対、と心の中で思う。

雪夜くんは本当に、心から私とは話したくないという顔をしていた。

最近はなし崩し的に口をきいてくれるようになったけれど、自分から進んで話しかけてくることなんて、ほとんどない。


梨花ちゃんの言うことを否定したいのに、「じゃあ二人で何してたの?」と返されたら、何も答えられない。


仕方なく黙ったまま、水着の上にカーディガンを着て梨花ちゃんについていく。


「着替え終わった?」


更衣室を出るとすぐに、嵐くんの声が聞こえてきた。

見ると、ハーフパンツ型の水着を着た嵐くんがにこにこしながら立っていた。


「おー、いい感じじゃん」