いつも活発ではきはきとして明るい梨花ちゃんの、こういう弱りきった表情を見るのは、なんだか新鮮で嬉しい。


「恋する乙女だね。梨花ちゃん可愛い」


実は、昨日の買い物の最後に梨花ちゃんと晩ご飯を食べていたとき、彼女が話してくれたのだ。

最近、嵐くんのことが気になっている、ということを。

それって好きってこと? と聞き返したら、たぶん……と梨花ちゃんは真っ赤な顔で答えた。


「もう、からかわないでよね……。ていうか、美冬のほうこそ、どうなのよ?」


脱いだ服を畳んで鞄の中に入れていると、梨花ちゃんが近寄って囁きかけてきた。


「え? 私のほうって?」

「だから、雪夜のこと!」

「へ?」

「いい感じなんじゃないの?」

「えっ、なんで?」


どうしてそういう話になるのか分からず首を傾げると、梨花ちゃんがにやにやしながら言った。


「だって、さっき、二人で遅れて来たでしょ? なんかいい感じになって話が弾んでるのかなって、嵐と私はあえて待たなかったんだよねー」


意表を突かれて、動きが止まってしまった。


「あ、やっぱ図星?」

「ええと……」

「いやー、意外だなあ。あの雪夜がねえ、美冬と」


梨花ちゃんは妙に嬉しそうだ。


「あ、でも、二人とも静かだし大人しいし、言われてみれば、なんていうか、波長が近いのかな。お似合いかも、うん」