遠藤くんはゆったりとした足どりで教卓の前を歩き、窓際の最前列までやってきた。

その間、クラスにいた全員の視線が注がれていたけれど、彼は気づかないのか、それとも気にしていないのか、超然とした様子をしていた。


遠藤くんはすこしうつむき加減で、列の後ろに向かってくる。

席に辿りつくと、音を立てて鞄を机に置き、どかっと椅子に座った。

それから、ポケットに手を突っ込んだままで、椅子の背にだらりともたれて浅く腰かけ、だるそうに窓の外に目を向ける。


不良、という言葉が頭に浮かんだ。

なんだか怖いな、と思ってしまう。


他のみんなも私と同じようで、彼の独特の雰囲気に気圧されたように誰も口を開かず、何事もなかったかのように彼から目を逸らした。


みんながどことなくぎこちない顔をしながらも、席について教科書やノートを出したり、友だちとおしゃべりを始めたりして、教室にいつもの雰囲気が徐々に戻ってくる。


斜め前に座っていた染川さんも、遠藤くんを目で追っていたけれど、しばらくすると肩をすくめて前に向き直った。