私の問いかけに、雪夜くんは眉根を寄せた。


「……怖くなんか、ない」


不機嫌そうな声でぽつりと答えて、雪夜くんは砂浜の上を歩き始めた。


左側には建ち並ぶ海の家、右側には大海原。

そのどちらも視界に入れないように、雪夜くんは下を向いて歩き続ける。


やっぱり海が怖いんだ、と思った。

海を見ることさえ嫌なくらい、海が怖いんだ。


そういえば、海へ行こうという話をしたとき、雪夜くんは乗り気じゃないみたいだった。

面倒がっているのかな、とあのときは思ったけれど、違ったのかもしれない。


それなのにここへ来たのは、私たちが海へ行きたいと言ったから?


私はそれ以上何も言わず、黙って俯く雪夜くんと並んで歩いた。


「おーい、雪夜! 美冬!」

「こっち、こっち!」

「いい場所とれたぞー」


砂浜の真ん中で、嵐くんと梨花ちゃんが大きく両手を振っていた。

私は片手を振り返して応え、それから雪夜くんを窺う。

慣れてきたのか、顔色は良くなっていた。


「どうする? あの場所でも大丈夫?」

「……ああ」


雪夜くんはちらりと視線を上げて二人の居場所を確かめると、小さく頷いた。


梨花ちゃんと嵐くんはビニールシートを敷いて待っていた。