本当は、こっちが本心だった。

私は学校の授業以外では水着なんて着たことがなくて、たくさんの人がいる場所で水着を着て歩くというのが、どうしても恥ずかしかったのだ。


『え? 恥ずかしい? 水着が?』

「うん、すごく恥ずかしい」


Tシャツよりも短い袖のものなど着たことがないし、肩の素肌を見せるというのは、私にとってはとてつもなく恥ずかしい。

ビキニタイプの水着でお腹を丸見えにできる女の子たちは、本当にすごいと思う。

私には絶対無理だ。


「……ねえ、どうしても、水着じゃないとだめかな」


数秒間の沈黙があってから、ふふっと笑う梨花ちゃんの
声が耳に届いた。


「もう、ほんと恥ずかしがりやだよね、美冬って。水着くらいなんてことないのに」

「そうかな……いや、やっぱり恥ずかしいよ」


梨花ちゃんはきれいなスタイルをしているし、肌もきっときれいに手入れをしているだろうから、露出をすることに抵抗はないのかもしれない。

でも、私はそういうことに疎くて、きっとみじめな姿をしていると思う。


『よし、分かった!』


自分の暗い考えに沈んでいたら、梨花ちゃんの明るい声が私を浮上させた。


『確認だけど、海には行きたいんだよね?』

「うん。海、見たいなって思ってたから」

『よかった。それなら、別に無理して苦手な格好することなんかないよ。美冬はさ、水着の上にTシャツでもカーディガンでも着てればいいから。それでも海は見れるでしょ?』