「じゃ、日にちも決めちゃうか」

「早いほうがいいな。八月になるとどんどん暑くなっちゃうし」

「じゃ、さっそくだけど、今週の土日とか。俺はどっちも空いてるよ」

「あ、私、土曜は習い事あるから、ごめん」

「なら日曜か。美冬は? なにか予定ある?」

「ううん、大丈夫」

「よし。雪夜はどうだ?」


これまで黙って外の景色を見ていた雪夜くんに視線が集まる。

雪夜くんはゆっくりと振り向いた。


「……海?」


聞き取れないほど小さな声で、独り言のように呟く。

そう、海、と梨花ちゃんが返した。


「ふうん」と雪夜くんは小さく言って、また窓のほうへ顔を向けた。


「なによー、その気のない返事は」

「べつに」

「乗り気じゃない感じじゃないの」

「……お前らだけで行けばいいんじゃないか」


梨花ちゃんが眉根を寄せた。


「そんなのつまんないでしょ。三人だとバランス悪いし」

「そうか?」

「そうだよー。なに、雪夜、行きたくないの?」

「………」

「海、嫌い?」


その言葉を聞いた瞬間、雪夜くんが視線を戻して、私をじっと見つめてきた。

どきりとして、私も見つめ返す。


「――べつに、嫌いじゃない」


はっきりとした声で、噛みしめるように、雪夜くんは答えた。


「海は、嫌いなんかじゃない」