振り返ると、まっすぐな瞳に出会う。


「無理するな。お前はそこで休んでればいい」


雪夜くんの細くて長い人差し指がさしたのは、ひときわ太い幹の大きな樹の下だった。


「ううん、大丈夫だよ」と首を振る。

雪夜くんは不機嫌そうに眉をひそめた。


「休んでろ」

「でも、私だけ、悪いし」

「一人が嫌なら、梨花も一緒に残ればいい。俺と嵐で行ってくるから」

「え……でも、本当に平気だから。ちょっとぼんやりしちゃっただけで、頭痛も目眩もないし」

「………」


雪夜くんは口をつぐみ、黙りこんだ。

梨花ちゃんが私と雪夜くんを交互に見て、「どうしたの、雪夜」と小さく呟く。


「なんか、変じゃない?」


不思議そうに梨花ちゃんは言った。

私もそう思っていた。

いつもは口数が少なくて会話に積極的に参加することなんてない雪夜くんが、いつもはなるべく話さないようにしている私に、こんなにたくさん言葉をかけてくるなんて。


心配してくれているのだろうと思うけれど、でもそれとは少し違う気もした。

まるで私も一緒に行きたくないような様子にも思える。


「どうしたの、雪夜。教会に何かあるの?」


梨花ちゃんが怪訝な顔でそう言った瞬間、雪夜くんはぐっと眉根を寄せた。


「……なんもねえよ。何もない。……行くぞ」


話を切り上げるように言った雪夜くんは、すたすたと再び歩き出した。


黙って成り行きを見守っていた嵐くんが追いかけ、雪夜くんに何か話しかけている。