「いって! うわー、もう終わった、骨折れたわー」


三浦くんがわざとらしく声をあげ、倒れこむふりをするので、周りで聞いていたクラスメイトたちが大笑いして集まってくる。


「はあ? こんなんで折れるわけないでしょ」

「本当だよ。な、霧原も聞こえただろ、ボキッて」


三浦くんがいきなり私に話を回してきたので、私は驚いてしまい、「え? ええと……」と口ごもってしまう。


「ほら、霧原も聞こえたってさ」


三浦くんがぱっと視線をみんなに戻して、おどけた調子で言うと、染川さんがまた怒った顔になる。


「染川、怪力かよ」

「ちがうって! もう、ひどい、最低。たすけて~」


染川さんが音を上げて、仲の良い女子たちに泣きつくと、まわりはさらに笑いに包まれた。


三浦くんと染川さん。

二人はクラスのムードメーカーだ。

彼らがいる場所にはいつも人の輪ができていて、笑いが絶えない。


すごいな、と感心してしまう。

私には絶対にできないことだ。

私は、たくさんの人に囲まれると、うまく声が出せなくなってしまって、顔も上げていられなくて俯いてしまうのに。


どうやったらこんなふうに明るくなれるんだろう。

遠い雲の上にいるような存在の二人を見ながら、私は小さくため息をついた。