「いつも寸暇を惜しんで読んでるなあ」
いきなり声がしたので、驚いて目をあげると、にこにこした嵐くんが目の前に立っていた。
「おはよ、美冬」
「おはよう。ごめんね、嵐くん来てるの全然気づかなかった」
「いいよ、そんなの。めっちゃ集中してたな」
「うん、夢中になっちゃって。すごく面白い本なの、これ」
「へえ」
嵐くんは興味を持ったように私の手もとを覗きこんだけれど、数秒で顔を上げて肩をすくめた。
「……無理だ。俺、小さい活字が密集してるの見ると、頭に靄がかかるんだよな」
「そうなの? 意外。本読むの好きそうなのに」
「そうか?」
「だって、勉強できるから」
「俺は理系教科で点数かせいでるからな」
そう言ってから、嵐くんはふいに真顔になった。
「……雪夜は、けっこう、本好きだよ。昔からよく読んでた」
「え? そうなの? 読んでるの見たことないな」
「たぶん、……いや、ごめん。忘れて」
自分から言い出したのに、なぜか嵐くんは言葉を呑み込んでしまった。
どうして急に雪夜くんの話を出したのだろう、と不思議に思ったけれど、嵐くんが「そういえば昨日さ……」と話題を変えたので、私もそれ以上は訊けなかった。
いきなり声がしたので、驚いて目をあげると、にこにこした嵐くんが目の前に立っていた。
「おはよ、美冬」
「おはよう。ごめんね、嵐くん来てるの全然気づかなかった」
「いいよ、そんなの。めっちゃ集中してたな」
「うん、夢中になっちゃって。すごく面白い本なの、これ」
「へえ」
嵐くんは興味を持ったように私の手もとを覗きこんだけれど、数秒で顔を上げて肩をすくめた。
「……無理だ。俺、小さい活字が密集してるの見ると、頭に靄がかかるんだよな」
「そうなの? 意外。本読むの好きそうなのに」
「そうか?」
「だって、勉強できるから」
「俺は理系教科で点数かせいでるからな」
そう言ってから、嵐くんはふいに真顔になった。
「……雪夜は、けっこう、本好きだよ。昔からよく読んでた」
「え? そうなの? 読んでるの見たことないな」
「たぶん、……いや、ごめん。忘れて」
自分から言い出したのに、なぜか嵐くんは言葉を呑み込んでしまった。
どうして急に雪夜くんの話を出したのだろう、と不思議に思ったけれど、嵐くんが「そういえば昨日さ……」と話題を変えたので、私もそれ以上は訊けなかった。