「ごめんね、ごめん……新しいの買ってあげるから」


謝りながら小さな頭をなでると、男の子の顔はさらに真っ赤になる。

ああ、どうしよう、と思っていると、ふっと影が落ちてきた。


見上げると、雪夜くんがじっと私たちを見下ろしている。

それから、すっと腰を落として、男の子の横にしゃがみこんだ。


「おい、こら。お前、この姉ちゃんの服、見てみろ」


雪夜くんは静かな声で低く囁いた。

男の子は驚いたように雪夜くんを見る。


すると雪夜くんは手振りで私に合図をして立たせ、それから横を向かせた。


「ほら見ろ。姉ちゃんの服、汚れちゃってるだろ」


男の子は弾かれたように私の背中を見て、それからそろそろと私の顔を見上げて、次の瞬間、わあっと泣き出した。


慌てて男の子を慰めようとしたけれど、雪夜くんの視線に止められてしまう。


「こら、お前、泣くな。泣く前にやることがあるだろ」


雪夜くんはやっぱり静かな声で、言い聞かせるように男の子の顔を覗きこむ。

男の子は泣きながら雪夜くんをじっと見た。


「お前がそれ持ったまま前も見ないで走ってきて、姉ちゃんの服、汚しちゃったんだよ。姉ちゃんに何か言うことあるだろ?」