私は「そっか」と頷き、ごめん、と言いかけてから、「ありがとう」と言い直した。


「これから気をつけるね」


そう言って笑いかけると、雪夜くんは「ん」と小さく頷いて、そっぽを向いた。


その見慣れたきれいな横顔を見ながら、いちおう私のためを思って言ってくれたんだよね、とむずがゆいような気持ちになる。

どんな顔をしていいか分からなくて、私も彼から視線を外した。


そのとき、後ろからばたばたと足音がして、振り向こうとした瞬間、腰のあたりにどすんと衝撃がくる。

驚いて視線を落とすと、小学校低学年くらいの男の子が目をまんまるに見開いて私を見上げていた。

その右手には、くしゃりと形の崩れたチョコレートのソフトクリームが握られている。

それを見たとたん、背中のあたりにひやりとした感覚があるのに気がついた。


走ってきた男の子と私がぶつかって、その子のソフトクリームが私に当たってしまったのだ、とやっと分かった。


「ごめんね、大丈夫!?」


慌てて男の子の前にしゃがみこむと、男の子は真っ赤な顔をして、潰れてしまったソフトクリームを見て今にも泣きそうな声でうっとしゃくりあげた。