すると、すぐ隣で雪夜くんが小さく舌打ちをするのが聞こえた。

思わず顔を上げて雪夜くんの表情を確かめる。


「謝るなよ……馬鹿。こっちの都合で、お前が悪いわけじゃない」


雪夜くんは決まり悪そうに呟いて、くしゃりと自分の髪をかきあげた。

その拍子に、いつもは長い前髪で隠れている目や額がはっきりと見えて、少しどきりとした。


それが気まずくて、私はまた「ごめん」と謝って視線を外した。


嵐くんと梨花ちゃんが、雑貨屋のおばさんに声をかけている。

私も一緒に話を聞かなきゃ、と思って、そちらに足を向けようとしたけれど、雪夜くんが再び口を開いたので、私は足を止めて振り向いた。


「だから、そのすぐ謝る癖、やめろって。いつも言ってんだろ」


雪夜くんはまっすぐに私を見つめている。


「自分が悪くないときにまで謝る必要なんかないんだよ。お前は周りの顔色、気にしすぎ」


私はぽかんとして雪夜くんを見つめる。


「いつも……?」


いつも言ってんだろ、というのは、どういう意味だろう。

私は雪夜くんにそんなことを言われたことがあっただろうか。


わけが分からず、黙って見つめ返していると、雪夜くんははっとしたように一瞬、眉を上げた。

でも、次の瞬間には、いつもの飄々とした表情に戻る。


「……いつもそう思ってたんだよ、お前を見てて。反射みたいに謝るから、……」


雪夜くんはそう言って口を閉じた。