このところ、葛西くんとよく話すようになった。

あの遠足の日がきっかけだ。


いつまで経っても人見知りで、梨花ちゃんたち三人以外とはほとんど会話ができなかったのに、葛西くんが話しかけてくれるおかけで、少しずつ話せる人が増えてきた。

近頃は、なるべく自分からも声をかけるようにしている。

こうやって少しずつ、この内気な性格を改めていきたい。


そんなことを考えながら、私はいつものくせで、左側に視線を向ける。

少し驚いてしまった。

ついさっきまで頬杖をついて窓の外を見ていた雪夜くんが、こちらを見ていたのだ。


「………」


なぜかどきりとしてしまった。

こちらを見ている雪夜くんの目が、あまりに澄んでいたから。

深くて静かな瞳。


しばらく無言で見つめ合う。

雪夜くんは、本当にきれいな目をしている。

輪郭や顔のつくりもきれいだけれど、その中でも特に、目が印象的だった。


「……どうしたの?」


黙っているのも気まずいので、意味もなくそんなことを訊いてみる。

案の定、雪夜くんは、


「……べつに」


と素っ気なく答えただけだった。


「そう……。文化祭、面白くなりそうだね。楽しみだな」


そう言った私の言葉には、雪夜くんは何も答えず、すうっと目線を外に戻してしまった。