「ごめんね、字、汚いけど……読みにくかったら言ってね」
机の中から取り出した古典のノートを手渡すと、染川さんが「ありがと」と受け取って、それからふるふると首を横に振った。
「ぜんぜん! ていうか霧原さんの字、きれいじゃん。丁寧だし読みやすいよ」
何か言い返そうと口を開いたとき、「おい、こら」と声が降ってきた。
「誰だ? ひとの予習を写させてもらってる不良は。これは没収だ!」
染川さんが持っていたノートが、ひょい、と上から抜き取られる。
先生に見つかった、と思って私は一瞬ひやりとしたけれど、見上げてみると、そこにいたのはクラスの男子だった。
「ちょっとー、やめてよ三浦!」
染川さんが顔をしかめて言った相手は、三浦くん。
どうやら、彼が先生の声真似をして、彼女をからかったらしい。
三浦くんは、入学式で新入生代表の挨拶をしていたから、学年ではすでに有名人だ。
クラスの委員長も任されていて、絵に描いたような優等生。
しかも、まるで芸能人みたいに整った容姿をしていて、他のクラスの女子や、先輩たちまで彼の顔を見に来ることもあるくらいだ。
それなのに、気取ったところは少しもなく、明るくて冗談が好きで、誰とでも気さくに話すので、男女問わずに人気がある。
机の中から取り出した古典のノートを手渡すと、染川さんが「ありがと」と受け取って、それからふるふると首を横に振った。
「ぜんぜん! ていうか霧原さんの字、きれいじゃん。丁寧だし読みやすいよ」
何か言い返そうと口を開いたとき、「おい、こら」と声が降ってきた。
「誰だ? ひとの予習を写させてもらってる不良は。これは没収だ!」
染川さんが持っていたノートが、ひょい、と上から抜き取られる。
先生に見つかった、と思って私は一瞬ひやりとしたけれど、見上げてみると、そこにいたのはクラスの男子だった。
「ちょっとー、やめてよ三浦!」
染川さんが顔をしかめて言った相手は、三浦くん。
どうやら、彼が先生の声真似をして、彼女をからかったらしい。
三浦くんは、入学式で新入生代表の挨拶をしていたから、学年ではすでに有名人だ。
クラスの委員長も任されていて、絵に描いたような優等生。
しかも、まるで芸能人みたいに整った容姿をしていて、他のクラスの女子や、先輩たちまで彼の顔を見に来ることもあるくらいだ。
それなのに、気取ったところは少しもなく、明るくて冗談が好きで、誰とでも気さくに話すので、男女問わずに人気がある。