小さな指が差したほうに目を向ける。

そこには、男の子と同じくらいの小さな女の子が、男の子と同じように悲しげに泣きじゃくっていた。


『ごめんね……』


男の子は、女の子の泣く姿をじっと見つめながら、本当に本当に苦しそうに、謝罪の言葉を絞り出した。


『ごめん、ごめんね……きみのだいじなものを、こわしちゃって、うばっちゃって、ごめんなさい……』


謝り続ける男の子の顔が、あまりにもつらそうに歪んでいるので、見ているこちらが胸をかきむしられたような気持ちになる。

きらきらと輝く透明な涙に濡れた頬に、私はそっと手を触れた。


この子は、どうしてこんなにも苦しんでいるんだろう。

誰かのためにこんなにもきれいな涙を流せる子が、誰かの何かを壊してしまったなんて、とても思えない。


『泣かないで』


気がついたら私はそんな言葉を口にしていた。

震えながら泣く身体を力いっぱいに抱きしめ、小さな頭に頬を寄せて、精いっぱいの優しい声で。


『きみは悪くない。なんにも悪くない。だから、もう、泣かないで。もう、自分を責めないで』


私は必死に語りかけた。

罪悪感に苦しむこの子を、なんとかして救ってあげたかった。


でも、男の子は首を横に振り、『ぼくがわるいんだ、ぼくのせいだ』と繰り返した。


ちがうのに、と私は心の中で叫ぶ。

分かってもらえないことが、この子を救えないことがつらくて、切なくて、私も涙を流した。