しかし、母北の方は几帳の陰に身をひそめ、がたがたと震えて首を横に振っている。



「いやだわ、気味が悪い! はやく片付けてちょうだい、胡蝶! お願いだから!」



胡蝶は不承不承、毛虫たちをそっとかき集めて虫籠に戻した。



「ごめんねえ、こんな狭いところに閉じ込めて。私といっしょね………」



黒々と蠢いている毛虫たちに向かって熱心に語りかける娘を見つめながら、父と母は顔を見合わせ、深々とため息をついた。



「………本当に、困ったものですわ。私たちの子どもなのに、どうして胡蝶はこんなに風変わりなのかしら」


「まったくだよ。どうしたものかね」


「お隣のお屋敷の姫君たちは、お花を見て楽しんだり、蝶や子犬を可愛がっているそうよ」


「だろうね、女の子ならそれが普通なんだよ」


「それなのにこの子ときたら、せっかく容姿に恵まれたというのに、毛虫なんかを可愛がるなんて………」



毛虫なんか、という母の言葉に、胡蝶はぴくりと眉を上げた。



「まあ、お母さま。毛虫なんか、なんて失礼よ。この子たちだって頑張って生きているのよ。そんなふうに言ったらかわいそうだわ」



それはそうだけど、と北の方は困ったように首を傾げた。