「烏毛虫(かわむし)の毛深きさまを見つるより とりもちてのみ守るべきかな」



唐突に歌を詠んだ清光を、胡蝶が驚いたように見上げた。


それを見下ろして微笑み、清光が言う。



「毛虫のように黒々と豊かで美しいあなたの眉や髪を見た瞬間から、あなたをとりもちで捕らえてしまいたい、そして側において見つめていたい、と思うようになりました」



胡蝶はしばらくぽかんとしていたが、歌の意味を理解して、弾けるように笑いだした。



「にせものの蛇を贈ってきたり、人をとりもちで捕らえたいと言ったり、まったく本当に変なひとねえ」



「あなたこそ、まったく変な姫君ですよ。そんなふうに全身に毛虫をくっつけて」



「あら、変かしら? こんなに可愛いのに」



「可愛いですが、変ですよ。我々はどちらも変なんです、似た者同士です。きっと前世から縁があるんでしょう」



清光は晴れやかに笑って、そっと胡蝶の手をとった。



それから、ゆっくりと顔を寄せ、愛らしい小さな耳に、何事かを囁きかける。


胡蝶は目をみはってから、頬をほんのりと上気させておかしそうに微笑み、こくりと頷いた。







【完】