駆けつけてみると、予想通り、いや予想を上回って、なんと胡蝶は御簾から出ているばかりでなく、庭に降りてしまっているではないか。


これでは外から丸見えもいいところだ。



しかも、男童たちと一緒になって、扇に虫をすくったり、毛虫を着物に這わせたりして遊んでいる。


大輔の君は青ざめた。



「姫さま! 庭になど降りて何をなさっているのです!」


「あら、大輔、いつの間に?」


「はやく御簾の内に入ってください! 誰かに見られたらどうするんです!」



胡蝶は「少しくらい大丈夫よ」とのんびり答える。



「それに、私は見られたって平気よ。恥ずかしいなんて思わないもの」



大輔の君はふるふると首を振った。



「いけません! そこの立蔀のところに、立派な殿方がいるようだと、童が言っているのですよ」


「え? 立蔀のかげに?」



胡蝶は眉をあげ、立蔀のほうに目を向けた。



「ん? 誰もいないわよ」


「きっとこちらの様子に気づいて身を隠しているのですわ」


「そうなのかしら」


「そうです。童が言っていたのですよ、変な格好をした男が二人いたと。間違いありません」