どうやら男童たちを虫の名で呼んでいるらしいと気づき、清光はもうおかしさをこらえきれず、必死に息を噛み殺したために脇腹が痛くなるほどだった。



しかし基常は眉をひそめて、呆れたように言う。



「なんとまあ、教養深く才知あふれる大納言どののお屋敷に、このような大変な姫君がいらっしゃるとは………ひどいものですね。きっと大納言どのも頭を悩ませておられることでしょう」



清光はくくくと笑いながら、


「いや、たしかに大変な姫君だ」


と答える。



「しかし、なかなか可愛らしい顔をしているよ。あの明るい笑顔も魅力的じゃないか?」



基常は「私には理解できません」と肩をすくめた。



「ふふん、いいさ。俺だけ分かっていればいい。かえって、恋敵が減って好都合、というものだ」



清光の飄々とした答えを聞いた途端、基常は「へっ!?」と驚きの声をあげて目を見開いた。



「清光どの、今なんと!?」


「ん? 恋敵はいないほうがいい、と」


「こ、恋!? 正気ですか!? あんな変てこな姫君に!?」



すると清光はにいっと笑った。



「言っただろう? 俺はね、ふつうの女には飽き飽きしているんだよ。どうせふつうでない女を求めるなら、あれくらい突き抜けた変わり者の姫君がいいさ」