人目も憚らずに庭に降りてしまった上に、着物をたくしあげてあられもなく素足を見せ、

しかも真っ黒な毛虫のうごめく樹を見て恍惚としている、風変わりな姫君。



あの姿を目の当たりにして、面白いと笑うとは。


基常は驚きを隠せない。


まったく、この清光という御曹司も、あの姫君に負けず劣らずの変わり者である。



かたわらの男がそんなことを考えているなどつゆ知らず、清光は立蔀のふちから姫君を覗き見る。



目を大きく見開いて毛虫を見つめている姿は、到底うら若き乙女とは思えない。


先ほど母屋から出てきたときも、どすどすと荒々しく足を踏み鳴らし、しとやかさのかけらもなかった。



いちおう人目を気にしてはいるのか、着ている上着を頭から被っていたのだが、毛虫に気をとられて、今はもうずり落ちてしまっており、髪も顔もあらわになっていた。



黒々とした髪は、まさか櫛を通していないのであろうか、絡まってぼさぼさになってしまっている。


顔のほうも、世間の姫君とはかけ離れていた。


白粉をつけていない。

眉は抜かれずに、しっかりと生えている。

お歯黒をしていないので、歯が丸見えでまったく色気がない。