そんな様子を、庭の隅の立蔀の陰から見ていた男が、二人。



「………いやはや、なんとまあ。驚いた」



呆然と小声で呟くのは、もちろん、夜明けと共に内裏を出て牛車に乗り、さっそく大納言のお屋敷に忍んできた清光である。



「噂に聞いていた以上に変てこな姫君だな」



かたわらで頷いているのは、お供でやってきた基常である。



二人は牛車を少し離れた通りに待たせ、変装をして難なく忍び込んできたのだった。


大納言が大勢の男たちを連れて出掛けており、警備の人手が少なかったのが幸いしたらしい。



「あの顔色を見てみろ。まるで源氏物語の絵巻に目を輝かせる女たちのようではないか。あんなに不気味な毛虫の行列を見ながらだよ」


「全くですね。あれは男が見ても鳥肌が立つような代物ですよ。やはり、あんな素っ頓狂な姫君は、とうてい受け入れがたいですね」



同意を求めるように基常はひそひそと言ったが、清光はにんまりと笑っている。



「ますます面白いではないか」


「………」



基常は絶句した。