「こんなにたくさんの毛虫が一度に見られるなんて……すてきだわ。ああ、でも、もう少し近くで見たいわ。ねえ、けら男。とってきてちょうだい、がばっと」
竹丸は「えっ」と顔をしかめた。
「いやですよ。あんなにたくさんいるのを取り分けるなんて、さすがに無理です」
「ええ? じゃあ、他に誰かいない?」
「………」
「お菓子をあげるわよ!」
「………」
男童たちは聞こえないふりをする。
毛虫の海に手をつっこめるほど豪胆な者はさすがにいなかったのだ。
むうっと頬を膨らませた胡蝶を見て、一人が機嫌をとるように言う。
「姫さま、庭へ出てきたらいいじゃありませんか。やっぱり、あの群れは近くで見たほうが面白いですよ」
それを聞いて、胡蝶は目を丸くした。
「え? そりゃ、私だって自分の目で間近で見たいけど。でも、庭へ降りたなんてお父さまに知られたら………」
「大丈夫ですよ、殿さまは今日はお帰りが遅いんでしょう?」
すると胡蝶が目を輝かせた。
「それもそうね! こんな機会はめったにないんだから、思いきって降りちゃおうかしら」
「ええ、ぜひそうしてください」
男童たちはほっとしたように息をついた。
竹丸は「えっ」と顔をしかめた。
「いやですよ。あんなにたくさんいるのを取り分けるなんて、さすがに無理です」
「ええ? じゃあ、他に誰かいない?」
「………」
「お菓子をあげるわよ!」
「………」
男童たちは聞こえないふりをする。
毛虫の海に手をつっこめるほど豪胆な者はさすがにいなかったのだ。
むうっと頬を膨らませた胡蝶を見て、一人が機嫌をとるように言う。
「姫さま、庭へ出てきたらいいじゃありませんか。やっぱり、あの群れは近くで見たほうが面白いですよ」
それを聞いて、胡蝶は目を丸くした。
「え? そりゃ、私だって自分の目で間近で見たいけど。でも、庭へ降りたなんてお父さまに知られたら………」
「大丈夫ですよ、殿さまは今日はお帰りが遅いんでしょう?」
すると胡蝶が目を輝かせた。
「それもそうね! こんな機会はめったにないんだから、思いきって降りちゃおうかしら」
「ええ、ぜひそうしてください」
男童たちはほっとしたように息をついた。