そのとき、男童の一人、ひきがえる似の『ひき麻呂』が縁側に駆け寄ってきた。



「姫さま、姫さま!」


「あら、どうしたの? ひき麻呂」


「すごいものを見つけました!」



あとからやってきた男童たちも同じように興奮した様子で声を高くして、「本当にすごいんです!」と頷いた。


胡蝶が目を丸くして、「すごいって、何が?」と訊ねかえす。



「そこの樹に、たくさんの毛虫が群がっているんです」


「まあっ、本当に?」



胡蝶がぱっと顔を輝かせた一方、侍女たちは毛虫の群れを想像したのか顔面蒼白になっている。



「ええ、本当です。それはもう、見たこともないくらいにたくさんの毛虫が!」


「まあ、見たいわ!」



胡蝶は母屋の端近くまでにじり寄り、さっと御簾を巻き上げた。


そして庭のほうへと顔をつきだす。



「こんなことをしたら、お父さまにひどく叱られちゃうけど、今日はお出かけしているから、少しくらい平気よね。ねえ、毛虫はどこ?」


「こちらです、この樹に」



竹丸が指差した樹の幹は、大量の毛虫がもぞもぞとうごめいて、地肌が見えないほどだった。



「まあっ、すごいすごい!」



胡蝶が歓声をあげた。


巻き上げた御簾の下から毛虫の群れを見てしまった侍女たちは、あまりの不気味さに、今にも倒れそうになっている。