「この珍しい、並大抵でない姫君は、いったいどんな顔をしているのだろうなあ………」



思いを馳せるように頬杖をついていた清光が、「よし!」と膝を打った。



「決めたぞ。俺は明日、虫めづる姫君のもとに忍んで行こう」



聞いていた貴公子たちが愕然として清光を見た。



「正気ですか? 清光どの」


「毛虫姫なんかに会ってどうするんです」


「まさか契りを結ぶのですか?」



そんな声は耳に入らない様子で、清光はうきうきしながら計画を練りはじめた。



「さすがにいきなり一人で行くのは良くないだろうな。基常どの、お付き合いいただけるかな」


「それは良いのですが……」


「大納言どのは五の姫君を目の中に入れても痛くないほど可愛がっておられるそうだからなあ、お屋敷に忍び込むのも一苦労だろう。きっとお屋敷の奥深くに身をひそめているだろうしな」


「それはそうでしょう、もちろん」


「さてさて、どうすれば虫めづる姫君のお顔を拝めるかな………」



清光がこうなると、もはや誰にも止められない。


貴公子たちは呆れ返った眼差しで、上機嫌にお忍びの算段をしている清光を眺めていた。