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「大納言の姫君より、お返事が届きました」
宿直所にやってきた従者の男がそう告げると、詰めていた貴公子たちがおおっとどよめいた。
「どれ、見せてみろ」
清光はわくわくした面持ちで文を受けとる。
やけにごわごわした、色気のかけらもない紙を開いてみると、
これまた艶っぽさのかけらもない、かくかくとした片仮名が並んでいた。
清光はぶっと噴き出し、声をあげて笑う。
「あはは! なんだ、この変な文は? 高貴な姫君が書いたものとは、とうてい思えないな。虫めづる姫は、やはり面白い御方だ」
ますます気に入ったぞ、と清光は膝を叩いた。
横から覗きこんだ基常は、眉根を寄せて口許を歪める。
「………なんですか、その奇妙な返歌は。極楽でお会いしましょう、など、馬鹿にしていますよ」
「いやいや、《ご縁があったら》と言っているではないか。つまり、こちらのことを憎からず思っているということだよ」
「そうでしょうか?」
「ふふん、蛇でおどかされた腹いせに、極楽などと言ってきたのだろう。なかなか可愛らしいじゃないか」
清光は上機嫌である。