胡蝶の手から文を抜き取ると、大納言は目を凝らした。


しばらくして、「ん、んんっ!?」と目を剥いた。



「こ、これは……まさか、清光どのの筆跡ではないか!」


「きよみつ、どの?」



世間の事情にうとい胡蝶は、きょとんと目を見開いて訊ね返した。


父大納言は驚きと興奮を隠しきれないまま、



「左大臣どのの御子息だよ!」



と答えた。


左大臣というのが最上級の官職であり、また現在の左大臣家はずっと昔から続いている名家だということは、さすがの胡蝶にも分かっていた。


その左大臣の御曹司から贈り物をもらうというのが、父にとって誇らしいことであるということも。



「そうか、なるほど、あの清光どのがなあ……確かに、少し変わり者だとは思っていたが、ここまでとは。いや、噂を流したかいがあったというものだ」



満足げに独り言を言っている父を、胡蝶は胡乱な目で見つめた。