それを聞いて、胡蝶がむっとした表情になった。



「まあ、あなたたち。なにもそこまで言うことないじゃないの。毒蛇とは限らないのだし」


「それはそうですけど……」


「それに、殺したりしちゃだめよ。もしかしたら、万が一、この蛇が私やあなたの前世での親だったかもしれないでしょう?

なんにせよ、見目のよいものだけを可愛がって、それ以外の生き物は嫌うというのは、ひどい心だと思わない?」



そのとき、蛇がおもむろに胡蝶のほうへ頭を向け、しゃあっと舌を出した。ような気がした。


胡蝶はびくりとして立ち上がる。



「うっ、わ、ちょっと待って、来なくていいのよ。か、噛んじゃだめよ!」



さすがに噛まれたらたまったものではない、とわたわた逃げる様を見て、

離れたところへ身を隠して蛇から逃げていた侍女たちが笑い出した。



「まあ、見て、姫さまったら。声が震えて、まるで蝉の声ね」


「やはり蛇はこわいのね」


「ほら、空を舞う蝶のように逃げ惑っていらっしゃるわ」


「姫さまも女の子なのねえ」