「まったく、近頃の若い人というものは、常識がなさすぎます。仕事もなさらずに、小鳥のようにぴいちくぱあちく……品がないったらありゃしない」



案の定はじまったお小言に、若い侍女たちは閉口した。



「しかも、自分たちのお仕えしている姫さまの陰口をおっしゃるなど、言語道断です。

いったいどんな教育を受けていらしたの? 親御さまの顔を拝見してみたいものですわ」



女たちがばつの悪そうな表情でうつむく。


伊勢中将の苛立たしげな言葉は続く。

勢いに乗ると止まらないたちなのだ。



「そもそもねえ、蝶を可愛がっているいらっしゃるというよその姫君なんて、まったく良いとは思いませんよ。むしろ嫌ですわ。そんな浅はかな御方より、うちの姫さまのほうがどんなにか聡明でいらっしゃることか。

その姫君がたが愛でていらっしゃる蝶も、もともとは毛虫なのですよ。あなたがたの忌み嫌う毛虫が脱皮して蝶になるのですからね。


姫さまは、毛虫が蝶になる様子を調べていらっしゃるのです。なんとまあ思慮深くていらっしゃることでしょう。

蝶なんて、触れると手に燐粉がついてしまって、たいそう不愉快だわ。しかも、流行りやまいの熱病の原因にもなるのよ。

ああ、嫌だ嫌だ、蝶なんて………」



伊勢中将はぶつぶつと文句を言いながら退出していった。


残された侍女たちはその後ろ姿を見送り、「いやねえ、年増女は説教くさくって」などと憎々しげに言い合った。