「姫さまったら毛虫を可愛がりすぎて、ご自分の眉毛まで、毛虫みたいにげじげじしてるものね」


「まあ、うふふ。ひどいこと言うわね。でも、確かにそうね。姫さまの歯だって、まるで皮が剥けた毛虫みたいだし」


「あら、あなたのほうがひどいわ!」



こんな冗談まで言って笑い合っているものもいる。



「とはいえ、いつまでもここでお仕えしていたいものよね。せっかく大納言どののお屋敷に雇っていただいたのだから」


「でも私、こんな毛虫まみれの生活、いつまでも耐えられそうにないわ」


「きっと大丈夫よ、そのうちこのお遊びにもお飽きになられるわ。今は毛虫みたいな身なりの姫さまだけど、成長なさって女盛りになれば、いつかは蝶のように美しくなられるはずよ」


「そうかしらねえ、毛虫が蝶に、ねえ………」



信じられないわ、と顔を見合せる侍女たち。



「でも、このお屋敷って」



なかでもひときわ若い侍女が冗談ぽく口を開いた。


この侍女は左近と呼ばれており、まだこの屋敷に出仕するようになってから日の浅い、幼さの残る少女である。


話し好きでくるくると表情を変えながらよく喋るので、年上の侍女たちに可愛がられている。