学校には、ヒエラルキーがある。
 最初にそんなことを言い出したのは誰だろう。

 目を凝らして教室を見れば、明確な階級は見えないけれど、だいたい3つくらいに分類されている。

 明るくて、ムードメーカーの華やかなグループ。
 おとなしいけれど、友達と一緒に過ごしているグループ。
 おとなしくて、友達も少ないグループ。

 このくらいか。


 それに加えてこの学校では順位至上主義ということもあって、勉強やスポーツでも、階級がわけられている。

 バカにしたり、バカにされたり。
 羨望の眼差しで見られたり、空気のように過ごしていたり。


 そういうのが、この学校にはある。中学の時よりも、それを感じる。
 


 私は多分、どっちかというと今は、一番上のグループに分類されるのだろうと思う。私が、というわけではなくて、内部組の茗子や飯山くんたちがそういうグループだから。

 みんなおしゃれで、明るくて、クラスの中心人物だ。

 たまたま出席番号が近かったことから、茗子たち内部組の友達といつも一緒にいるようになった。他の外部組の子には私も内部組のように映るんだと言われたことがある。

 まわりも、そんなヒエラルキーを感じてるってことなんだろう。


 ……どうでもいいけど、この立場にいるということは、楽だ。


 成績が下から数えたほうが早くても、誰かに笑われることもない。話しかけられてもそれなりに接していればいいだけ。友達で得をしているってこういうことなんだろう。

 他のクラスだったら、茗子と友達にならなければ、私はこんな立場ではいられなかっただろうから。


 若干の我慢はしているけれど、それはこの学校に限ったことじゃない。

 これが昔からできてたら、もっとよかったんだろうけど。今となってはどうでもいいことだ。今の学校も順位至上主義なところを省けば楽しいし。
 気分が落ち込むだけで、学校で過ごすぶんには、関係がないし。


——『君みたいになりたいから』


 あの男の子は、今、どうしているだろう。
 今の私を見てどう思うだろう。





 休み時間に茗子たちに試験に出そうなところを教えてもらい、なんとか頭に詰め込んだおかげでテストの出来は、いつもよりまだマシな感じだった。

 とはいえ、安心できない。
 なんせ私が苦手とする科目だ。

 期末テストは終業式に貼りだされるとか言ってたかな。
 きっといつものように、靴箱の目の前にある壁一面に順番がばーんと……ああ、憂鬱。

 明日からみんな休みだっていうのに掃除しに学校に来なきゃいけないし。


「あはは! 頑張れ、輝!」


 落ち込む私に、茗子が笑いながら肩をぽんっと叩いた。


「テストは終わったし委員会くらい! とりあえず遊ぶぞ―!」

「そうこなくっちゃ! じゃあ行くかー!」


 明日から、いや、今日この瞬間から夏休みだ。委員会なんてテストに比べたらなんてことはない。
 それに、夏休みは茗子たちと遊ぶ約束もある。

 学校がなくて毎日家にいるのは苦痛だけど、みんなと遊んでいればいい。それができる今年の夏休みは、久々に楽しみ!

 そう思って鞄を手にした瞬間、教室のスピーカーからガタガタと音が響いた。