どす黒く広がっていく煙。



真っ赤に蠢く炎。



炎が発する熱気のせいで、蜃気楼のようにゆらゆらと歪む景色。





その向こうに、黒い人影。




まっすぐこちらに向かってくる。




あたしはその姿に目を凝らした。




そして、待った。





はやく、来てーーー






「…………彰……っ」





「百合!!」






炎を掻き分けるようにして目の前に躍り出てきたのは、あたしが待ち望んでいた人ーーー彰だった。






「馬鹿っ、なんで、こんな危険なところに………!」






彰がいつになく焦ったような顔つきで言い、あたしの足の上に載っている梁を掴む。




手袋をつけているけど、熱いに違いない。



それでも彰は、迷わず梁を担ぎ上げた。




きつく眉根を寄せて歯を食いしばり、肩に載せた梁を持ち上げるようにすると、挟まれていたあたしの足のまわりに、少しだけ空間ができた。




急いで引き抜いて見てみると、焦げたモンペの隙間から、真っ赤に腫れた肌が覗いていた。




でも、腫れているだけで、ちゃんと動かすことはできる。




それを見て、彰が安堵のため息をつき、担ぎ上げていた梁を下ろした。