それは、ほんの数秒の出来事だった。



飛行機が通り過ぎる、ほんの一瞬。




エンジン音が遠ざかっていくのを確かめてから、あたしはふらふらと外に出た。




お爺さんは真っ黒に焦げて、壁に貼り付いたままになっている。





両側に真っ赤な炎と真っ黒な煙がもうもうと立ち昇る道の真ん中で、あたしは呆然と立ち竦んだ。






………なんで、こんなことに?



この人たちが何をした?



ただ生きていただけなのに。



食料も物資不足する中、大事な着物や家財道具を売り払ってまで必死に食べ物を掻き集め、命をつないで、ただ行きていただけなのに。




どうしてこんなふうに死んでいかなきゃならないの?





いやだ、いやだよ………。




誰か止めてよ。




戦争なんかやめてよ。





家を失って、何もかも火事で失って、命まで失って。




そこまでして何が欲しいの?




そこまでして得たものに、どんな価値があるの?






早く気づいてよ。




こんなこと無駄だって。





日本でもアメリカでもいいから、一刻も早く気づいて、戦争をやめようって言ってよ。





ねぇ、早く気づいてよ。






戦争なんてやめてよ。





こんなの、狂ってる。