たくさんの焼夷弾が降ってくる。




思わず見上げると、飛行機が驚くほど低くを飛んでいた。



数え切れないほどの銃弾が、ものすごい勢いで、雨あられのように飛んでくる。




機銃掃射という攻撃だ。



戦闘機についた機関銃が何十秒間も標的を撃ち続けるのだ。




近くの建物の壁に機銃の雨が降り注ぎ、無数の穴が空いた。



その穴から、家の中がぽっかりと見える。





もしもあれに当たったら………。




ぞっとして、必死に足を動かした。





ちらりと振り向くと、100メートルくらい後ろにばらばらと銃弾が飛んでくるのが見えた。




怖すぎて、呻き声さえら出ない。




まるで、自分が、ゲームの世界の住人にでもなったような気がした。



主人公が銃を乱射しながら次々と倒していく、とるにたらない小物の敵キャラクター。



ただ一方的に狙われ、追われ、攻撃される哀れな標的。




きっと、あの戦闘機に乗っている操縦者は、それくらい無感動に、何の良心の咎めも感じずに、逃げ惑う一般市民たちに狙いを定めているに違いない。



だって、命ある、心ある人間相手だと思っていたら、こんなにも無慈悲に銃を乱射することなんて出来ないはずだ。




しばらくすると飛行機が遠ざかったので、少しだけ緊張が解けた。




運悪く焼夷弾の落ちた家の屋根から、煙と炎が立ち昇る。




熱風を受けて汗がだらだらと流れ、それが目に入るので何度も袖で拭った。



拭っても拭っても汗が出て来る。




火事が広がり、炎と炎が合わさって勢いが増し、熱くて熱くてたまらなかった。